近年、兵庫県が抱える問題

同じ関西圏にありながら「大阪・京都のインバウンドの勢い」を取り込めず観光は伸び悩み、女性や高齢者の就業率も低いまま、人口の流出が目立つ兵庫県。しかし、素晴らしい地域資源に恵まれ、ポテンシャルは極めて大きい。そんな同県に今必要なこととは？
豊富な魅力も課題も「日本の縮図」
兵庫県と聞いて何を連想するだろうか？ 飲食に限定しても、日本海の冬の味覚「松葉ガニ」、丹波篠山など中山間地域のこれまた冬の風物詩「牡丹鍋」、灘の生一本に代表される清酒、神戸の洋菓子・洋食さらには神戸ビーフ、淡路島の糖度の高い玉葱など、多様な魅力にあふれており、しかもいずれも一級品である。
兵庫県は気候・地形、産物・産業、歴史・文化、地域風土などあらゆる面において多様な側面を有し、日本で見出される特性の多くを有するがゆえに日本の各地を悩ます様々な課題・問題点の多くを抱えていることも意味しています。そのなかでも特に兵庫県および神戸市のが抱えている問題である人口減少、インバウンドの停滞、そして女性就業率の低さをまとめてみました。

県と神戸市の人口流出　その要因と対策

人口減少に関しては、特に転出超過が深刻です。
兵庫県は都道府県別転出超過ランキングで例年全国ワースト上位です。また、神戸市も政令指定20都市の中で転出超過ワースト上位となっています。
神戸市では、市内西部からは子育て支援策の充実した明石市への転出が、また東部からは中心市街地の再開発が進み大阪への通勤通学の利便性の高い西宮市・尼崎市などへの転出が目立ちます。県域全体で見るならば、兵庫県は「南北問題」の典型例です。人口・経済活動の大部分が南部の瀬戸内海沿岸域に集中し、県の西部から北部にかけての中山間地域や日本海沿岸域は人口減少・過疎化・高齢化が深刻化しています。
同県は大阪経済圏の拡大に伴って発展してきた経緯があり、したがって大阪の経済的地盤沈下が進めば、おのずからその負の影響を受けざるを得ない状況です。若年層の進学・就職を契機とした県外転出が多いのは他道府県と同様ですが、その内訳は、大阪府に年間約2000人、東京圏へは約8000人となっています。
県として独自の対応策はもちろんですが、同時に、今後は大阪経済圏再浮揚の「機会」を捉え、それと歩調をあわせ連携した県創生を目指しなければなりません。日本全国、隣接する都道府県同士というのは利害の調整が難しい面はありますが、建設的なアライアンスを期待したいところであります。

インバウンドと
女性就業の低迷は機会損失

兵庫県が直面するもうひとつの課題は、インバウンドの停滞です。外国人延べ宿泊者数において大阪府、京都府が全国上位に位置するのに対して、兵庫県は全国のまん中ぐらいです。同じ関西圏にありながら大阪・京都のインバウンドの勢いを取り込めていません。
また、（滋賀県と京都府を除き）広く関西地方にも言えることですが、兵庫県の女性就業率は全国最下位グループに属しています。その要因として、大阪にあった大企業の本社機能が首都圏などに続々移転したのに伴い女性たちも首都圏等に転出してしまったこと、「女性は家庭を守る」という価値観が今でも地域に根付いていること、三世代同居率や潜在的保育所定員率が低いことなどが挙げられています。しかし、生産年齢人口が減少する中、高齢者就業率の改善ともども、労働力確保という意味からも早急に克服すべき課題です。
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